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基調講演「オーダーメイド医療とバイオバンク」
こういうような話をすると、なかなか難しいかもしれませんが、みなさんは経験的に、「うちは何とか家系だ」とか、「何とか体質だ」というふうなことを聞かれたことがあると思います。すなわち、我々の病気というのは遺伝的な違いと環境の違いの複合的なもの、つまり遺伝的な要因と環境要因が重なって病気というものが発生します。今まで、これを科学的に解明するということはなかなか難しかったわけですが、ゲノムの研究が進み、その過程でいろいろな技術が開発されて、我々は個々人の遺伝子の違いを病気の背景に結びつけるということが可能になってきました。2000年からミレニアムプロジェクトという形で非常に大掛かりに我が国でも遺伝子研究が始まっています。この「オーダーメイド医療実現化プロジェクト」はその発展型として非常に大掛かりな形で患者さんに協力していただいて、病気の根本的な原因をつきとめるとともに、いろいろな薬に関係する作用、副作用を明らかにしようとするものであります。ずっと、難しい話をしてまいりましたが、もっと別な角度から薬の副作用というものを考えて見ますと、われわれは日常、こういうことを体験していると思います。
例えば、お酒をこの会場におられる方に無理やり飲ませるとどういうことが起こるでしょうか。平気な人もいる、真っ赤になる人もいます。中には、気分が悪くなって動悸がしたり倒れたりする人もいます。なぜ、こういう違いがおこるのかというと、我々は、個々人間でアルコールを分解する能力、あるいはアルコールが入ったときに、頭の中で起こる変化が違う、その違う原因として、遺伝子の違いがあるということは皆さんご存知のはずです。アルコールを分解する酵素が作れなければ、我々は少しのアルコールでもアルコールの濃度が非常に上がってしまって、特異的な反応を起こします。そのように、アルコールでは経験して「私、お酒は飲めない」といって避けることを、薬ではしてこなかったのです。非常に一部ですが副作用が強く出る患者さんがいます。それが、実は振り返ってみると遺伝子の違いによって薬をなかなか分解できない人だということが明らかになりつつあり、副作用をとことんつきつめていけば、ある程度科学的な形で副作用を防ぐことができると考えています。皆さんが頭痛になると、いろんな薬を飲まれると思いますが、その時に、「私はこの薬が合う」とか「この薬を飲むと、どうもうまくいかない」という人がおられると思います。そのような場合でも、やはり遺伝暗号の違いによって薬に対する反応、あるいは薬を分解する能力が違うということがわかりつつあるのです。それをもっと大掛かりに解明して副作用を回避するような診断システムを作りたいと考えています。それからもう一点、病気になりやすい、病気になりにくいということを、遺伝暗号の違いで説明したいと考えています。遺伝子を解明することによって、今、治らない病気の原因をつきとめて、病気を治すような薬、治療法を開発したいということも、我々が考えている1つのゴールです。
病気のかかりやすさを、家の設計図と地震というもので考えてみましょう。家というのは、設計図に基づいて作られます。「設計図が完璧で、その完璧な設計図に基づいてしっかりとした家が作られる」。あるいは「設計図のどこかにミスがあってそれに基づいて家がつくられる」とします。手抜き工事じゃなくて、設計図に基づいてちゃんと家が作られているとしても、設計図自体にどこか手抜きがあったり、おかしなところがあったりすると、同じ震度の地震が来ても、びくともしない家もあれば、壊れてしまう家もあります。これが、我々の持っている遺伝暗号の違いと、我々が様々な形で体験するストレスと同じような関係にあるわけです。同じストレスがかかっても病気になる人もいるし、病気にならない人もいる。なぜかというと、この設計図(これがゲノムですけれども)の個人個人の微妙な違いが、病気に対しての強さを変えているからです。私達は、この同じストレスや環境で病気になったりならなかったりする原因を遺伝子のレベルで明らかにして、今原因のわからないような病気の原因を明らかにしようというアプローチを行いたいと考えております。
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